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2015年12月15日火曜日

News: コーヒーは確かに肝がんリスクを抑える!


今日のMED News。

ポツダムにあるドイツ栄養学研究所Deutschen Instituts für Ernährungsforschung (DIfE)の研究者は、これまですでに知られていたコーヒーの抗がん効果のメカニズムを詳しく研究し、結果を発表しました。
"American Journal of Clinical Nutrition"に掲載された論文によると、日常的に一日600ml以上のコーヒーを摂取する被験者では、摂取量が一日300ml以下の被験者と比べ、肝臓がんにかかるリスクが75%も低いという結果が出ました。
 
この結果は、数多くの他の論文のメタアナライズも含んだものだということです。そのうえで新しく21種類の肝細胞マーカーをそれぞれ調べ、これらの体内での役割とそのメカニズムを解明しようという試みでした。
 研究においては、試験期間中に初めて肝臓がんを患った125人、そして250人の健康人の血液が調べられました。前者の検体は研究発足の2,4から6,8年前に採られたもので、実際の解析までの期間にはマイナス196℃の液体窒素の中で保存されていました。
 
実験を経て、研究者たちはコーヒーの摂取と肝がんの関係性に関する以下の3種類のバイオマーカーを特定。
・炎症発生時に多く放出されるサイトカインの一種、インターロイキン6 (Interleukin-6, IL6)
アスパラギン酸アミノ基転移酵素 Aspartat-Aminotransferase (AST、= Glutamat-Oxalacetet-Transaminase、GOT) ― アスパラギン酸とα-ケトグルタル酸をグルタミン酸とオキサロ酢酸に相互変換する酵素。 主にミトコンドリア内で働く m-AST と細胞質基質で働く s-AST に分類される。
γ-グルタミルトランスフェラーゼ Gamma-Glutamyltransferase ― グルタチオンGlutathion (GSH) などのγ-グルタミルペプチドを加水分解し、他のペプチドやアミノ酸にγ-グルタミル基を転移する酵素。γ-グルタミルトランスペプチターゼとも呼ばれる。 生体内ではそのほとんどが膜結合型酵素として存在し、膜を介したアミノ酸の移動に関与している。

二つ目と三つ目の酵素は、肝細胞や胆嚢の病気(胆石や炎症など)の際に数値が上がり、病気を示唆する重要なマーカーです。
 
記事の中では詳しく書かれていませんでしたが、 これらのバイオマーカーがコーヒー大量摂取者においては低い数値を出した、という解釈でいいでしょう。

「我々のバイオマーカー解析の結果は、大量なコーヒーの消費と肝がんのリスクの減少の因果関係を示唆している。また、この結果は、コーヒーが肝臓を炎症や細胞破壊から守り、がんの発生を防ぐ役割を持っていることをも示している」と研究者は語りました。

実際どのような数値が出ていたのか、被験者の共通点はどこまであるのか、実験のリミテーション、肝臓がん発症者とそうでない者の生活環境の違いなどなど、知りたいことはたくさんありますが、これらは詳しいことは元の論文を読まないと分かりませんね。
 
ですが、この情報が本当ならば、コーヒー大好きな方には朗報なのではないでしょうか。私はあまりコーヒーを飲めないので(ブラックとか無理です…)、残念ながらこのような嬉しい効果は期待できませんが。

2015年12月9日水曜日

オゾンと人体について (未完)

昔やっていたブログからこのブログにお引越しさせた「gremz」(パソコンブラウザ表示にて画面右下参照)。ブログ記事を投稿すると、それが肥料となり水となり、苗を立派な木になるまで育ててくれます。
そうやって大人の木になったら、NGO団体の協力のもと、世界のどこかで実際に植林されるんです。例えば私はこれまで4本の木を大人まで育て、彼らは無事モンゴルに植林されました。
とってもいいアイディアですよね。ブログを書くだけで環境保護を助けることができるなんて!
ブログを再開したことで、またこのような素敵なエコアクションに参加できることが嬉しいです。

さて、そんなgremzのメールマガジンにおいて、毎回ひとつ環境に関するキーワードを当てるクイズがあります。今回の問題はこちら。
----------------------------


・問題
地球の大気中で、酸素原子3個からなる気体が濃度の高い部分をなんという?

・ヒント
酸素原子3個からなる気体は、高度約10キロ~50キロの大気圏にあり、
20キロ付近が最大濃度となっています。

A.○○○層
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答えは簡単ですね?

ということで、今回は「オゾン」という物質、そしてそれが人体に与える影響についてお話します。

(続く。)

2015年12月6日日曜日

News: シロクマのクヌートの死因が判明



つい先日知った、今年三月のニュースです。


一番最初の記事でご紹介した、あのシロクマのクヌートのお話なので紹介させていただきます。
4年半前に突如として死んでしまった彼の死因はしばらく不明でしたが、詳しい検証を経て、彼がなんとある重い疾患を持っていたことが判明しました。

生まれてすぐ母親に育児放棄され、飼育員のトーマス・デルフライン氏Thomas Dörfleinの献身的な飼育によって立派に成長した彼は、2011年3月19日にてんかんの発作を起こし、池に落ち溺死してしまいました。この死亡時の模様は動画として見ることができます。
あれから、ドイツ神経性疾患専門機関や、ライブニッツ飼育・野生動物専門研究所、シャリテ大学病院などの協力によって、組織学的検査、マイクロアレー次世代シーケンサーなどによる病因の探索が行われ、最終的に抗NMDA受容体抗体脳炎(英Anti-NMDA receptor encephalitis)であったことが報告されたのです。ヒト以外の動物においてのこの疾患の証明は初のことでした。

これは、ヒトでも似たような経緯で発症する自己免疫型脳疾患です。みんな大好きWikipediaさんからの記事を参考に、箇条書きで要点をまとめました。 
  • 脳の興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体、NMDA型グルタミン酸受容体自己抗体ができることよる急性型の脳炎。致死的な疾患である一方、治療により高率での回復も見込める疾患である。
  • 卵巣の奇形腫(下記参照)などに関連して発生する腫瘍随伴症候群と考えられているが、腫瘍を随伴しない疾患も多数存在している。 
  • 2007年1月、ペンシルバニア大学のDalmau教授らによって提唱された。疾患として認識されたのはつい最近!
  • ある日から突然、鏡を見て不気味に笑うなどの精神症状を示しだし、その後、数か月にわたり昏睡し、軽快することが自然転機でもあるため、過去に悪魔憑きとされたものがこの疾患であった可能性が指摘されているおり、映画「エクソシスト」の原作モデルになった少年の臨床像は抗NMDA受容体抗体脳炎の症状そのものと指摘されている。また、興奮、幻覚、妄想などいわゆる統合失調症様症状が急速に出現するのが本疾患の特徴であるため、統合失調症との鑑別も重要。
 発生学 Epidemiology/Etiology
  • 未知の病因とされている脳炎の1%程度含まれると推定されている
  • ランセットの100例を検討した記事によると、
    • 100人の患者のうち91が女性。 m<<f
    • 平均年齢は23歳5-76の範囲)。 若年で発症する可能性が高いようだ。
    • 腫瘍学的スクリーニングを受けた98人の患者のうち58人は腫瘍を持っており、主に卵巣奇形腫であった。(下記参照)
  • 577人の患者を評価したより大規模な研究では、
    • 394人の患者 (79%) は24ヵ月で良好な転帰を有することを示した
    • 30人の患者 (6%) が死亡
    • 残りの15%の患者は軽度~重度の障害が残った

奇形腫(きけいしゅ、テラトーマteratoma)とは2杯葉性あるいは3胚葉性成分を有する、すなわち最も高分化な胚細胞性腫瘍
  • 良性の「成熟奇形腫」と、やや悪性傾向を有する「未熟奇形腫」がある。
  • 主として性腺に生ずるが、発生の過程で卵黄嚢から性腺に移動する途中で迷入した胚細胞に由来するものが、体の各部(ほとんどは正中面上)に生ずることがある。
    • ヒトの卵巣に生ずるものはほとんどが良性成熟嚢胞性奇形腫(せいじゅくのうほうせいきけいしゅ)で、外胚葉成分、特に皮膚と皮膚付属器(毛髪、皮脂腺、汗腺)が大部分を占めることから「皮様嚢腫」(ひようのうしゅ、dermoid cyst)とも呼ばれる。
    • ヒトの精巣に生ずる胚細胞性腫瘍はほとんどが悪性で、奇形腫の頻度は低く、奇形腫が生じた場合もしばしば、未熟奇形腫であるか、または高悪性度な他の組織型の胚細胞性腫瘍との混合型腫瘍である。
卵巣奇形腫は内胚葉、中胚葉、外胚葉すべてを含む腫瘍であり、それにより髪の毛や骨などが含まれることが多い。この奇形腫の中に脳組織が含まれた場合、脳組織 に対する抗体が生じ、抗NMDN抗体脳炎が発症するものと考えられる。そのため、治療には奇形腫がある場合はそれが抗体産生の源となっているため、奇形腫 の外科的切除をまず行う。


兆候・症状 Symptoms
患者によって違いがあるが、症状の出方には一定の順序に従う傾向にある。
  1. 前駆症状として、非特異的なウイルス様症状(発熱、頭痛など)。
  2. 精神障害、統合失調症に似た症状(幻覚、自殺念慮)を生じる
  3. 記憶障害、特に前向性健忘。
  4. ジスキネジア(特に口腔顔面)とてんかん発作。
  5. 低いグラスゴー・コマ・スケール (GCS) = 意識障害あり
  6. 低換気 / 呼吸抑制。
  7. 自律神経障害

病態生理 Pathophysiology
脳脊髄液 (CSF) 中の抗体の存在
自己抗体が脳内のNMDA型グルタミン酸受容体を攻撃することにより起こる。病気の正確な病態生理はいまだ議論されているが、脳脊髄液 (CSF) 中に抗NMDA抗体をみとめる。
この理由としては、以下の二つの可能性が考えられる。
  1. 血液脳関門 (BBB) は通常循環系(=血液)から中枢神経系(=脳+脊髄)を分離し、脳に大きな分子が侵入することを防止する。このバリアは神経系の急性炎症により崩壊し、また副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone, ACTH)を放出する肥満細胞(独Mastzellen英mast cells)の急性ストレスではその透過性が亢進することが知られている。→炎症によりBBB外部から抗体が脳内に侵入、後に検出される。
  2. DalmauらはCSF中の抗体濃度が高い一方で、58人の患者のうち53人は、少なくとも部分的にBBBを保存していたことを明らかにした。このことは抗体の髄腔内生産の可能性を示唆している。
NMDA受容体への抗体の結合
抗体はCSFに侵入すると、NMDA受容体のNR1サブユニットに結合する。神経障害がおこるメカニズムとして下記の3つのものが考えられている。
  1. 抗体が結合することによる受容体数の減少。→シグナル伝達が非効率化される。
  2. 薬理作用として直接的な拮抗作用による。→本来結合するはずの物質が効果を発揮できない。
  3. 補体の古典経路により生じた膜侵襲複合体 (MAC) により細胞が融解する。→細胞全体が破壊され、脳神経の数が減少する。
治療と予後 Therapy and Prognosis
腫瘍を外科的に除去することにより自己抗体の供給源を根絶することができるため、患者に腫瘍が発見された場合(腫瘍随伴症候群の場合)は長期予後は一般に良好であり、再発の可能性が低い。また、早期診断、治療は患者の転帰を有意に改善することが近年示されている。大多数の患者が初発症状として精神症状を呈し精神科を受診しているため、すべての医師(特に精神科医)は思春期における急性精神病の原因として抗NMDA受容体脳炎を検討することが重要である。
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ついこの間クヌートの話をしたところで、たまたま読んだ雑誌に彼の話が出てくるとは、なんだか縁を感じます。
動物でも起こりうるこの稀な脳疾患。病気として認められてからまだ10年も経っておらず、正しい診断を下されていない患者さんも多いのではないのでしょうか。多くの場合、しばらく経てば自然に治るものであればなおさらです。それでも急性の炎症で脳にダメージを与えるのは明白ですし、症状が出ている間は精神の病気を疑われることになり、身体的にも心理的にも気持ちのいいものではないでしょう。
上記の理由で見落とされがちでしょうが、幸い、発見できた際には予後は良好。少しでも多くの患者さんが治療されるよう、これからもデータを集めたうえでのスクリーニングや細かい鑑別が重要になってくるのではないでしょうか。

残念ながらクヌートの場合は、早期発見とはいかなかったようですが。ヒトでも稀な病気、シロクマにも起こると知るのは初めてでしたし。それでも、溺死の原因となった発作の前に、何か他の兆候はなかったのでしょうか。もう少し、調べてみる余地はありそうです。

2015年12月5日土曜日

News: テストステロン投与が糖尿病治療の効果を高める

今日のMED News。

アメリカの研究プロジェクトグループ"Diabetes Care"によると、低テストステロン値を持つ男性のⅡ型糖尿病患者に対するテストステロンの投与は、ホルモン治療の側面だけでなく、インシュリンへの感度を高め糖尿病の治療をより効率的にする効果を持つことが分かりました。
(テストステロンについては記事下部参照)

ニューヨーク・バッファロー大学が行ったランダム化試験では、94人のⅡ型糖尿病男性患者が集められました。うち44名において、テストステロン値、そしてインシュリン遺伝子の転写頻度の低さが認められました。これによるインシュリン感度の低さは、血糖値の下がりにくさを顕著にしていました。
実験において、彼らは24週間にわたり、テストステロン注射、もしくはプラシーボの注射で治療されました。その結果、テストステロンを投与された患者においてインシュリン感度の著しい上昇を確認。筋肉などの組織のグルコース(ブドウ糖)吸収度が32%上がりました。また、インシュリン遺伝子の転写もテストステロンにより活性化されたというデータが出ました。

また、この治療法は、体重の変化が起きない場合において、体脂肪率の低下と筋肉質の増加に貢献しました。それぞれ3kgずつ変化したそうです。
ヘモグロビンにグルコースが結合したものであるHbA1c(記事下部参照)の濃度に変化はありませんでしたが、空腹時の血中グルコース濃度が12mg/dlも低下したという結果も出ました。HbA1cに対する影響を知るためには、更に長期の治療が必要であるとのことです。

「これは、テストステロンがインシュリン感度を上昇させることができる、つまり一種の代謝ホルモンであるという初めての確固たる証拠だ」と、論文の第一著者である Paresh Dandona は強調しました。


元記事
Testosteronersatztherapie hilft Diabetikern gleich doppelt 
APA Dez 3, 2015
http://www.univadis.de/medical-news/53/Testosteronersatztherapie-hilft-Diabetikern-gleich-doppelt?utm_source=newsletter+email&utm_medium=email&utm_campaign=medical+updates+-+daily&utm_content=506288&utm_term=automated_daily


テストステロン
 ・アンドロゲンに属するステロイドホルモンで、男性ホルモンの一種。
・ほかのステロイドホルモンと同様、19の炭素からなるアンドロスタンAndrostanが基盤となる。
・前駆体はジェスタジェンGestagen (21C) または DHEA (Dehydroepiandrosteronデヒドロエピアンドロステロン)。
・名前の由来: Testis + Steroid (睾丸+ステロイド。下記参照)

テストステロンの生成
哺乳類のオス
  95% 睾丸 (=精巣。いわゆるゴールデンボール。独Hoden英testicleラテンtestis)
    5% 副腎 (独Nebennniere英adreanal glandラテンGlandula suprarenalis)

睾丸では下垂体ホルモンの一つである黄体生成ホルモンLH (luteinisierende Hormon) の刺激により、ライディッヒ細胞(Leydig-Zwischenzellen)から生成される。  

一日の分泌量は? 血中濃度は一日の中でも変動する。基準値の範囲は2.00-7.60ng/mlくらい。

哺乳類のメス
  卵巣や副腎から男性の5-10%程度量ながら分泌される。

テストステロンの作用 
  ・筋肉増大 (→ドーピング剤)
  ・骨格の発達 (※テストステロンと成長ホルモンのバランスが崩れると背が伸びなくなる。少なくても多すぎてもダメ)
  ・女性の男性ホルモン分泌の分泌量は前述通り男性の5-10%程度で、陰毛の発毛に関与する。


性ホルモンとしての作用
 ①胎生期、妊娠6週目から24週目にかけて大量のテストステロンが分泌される時期があり、これにさらされること(アンドロゲン・シャワーと呼ばれる)によって、脳は女性的特徴(ホルモン分泌の周期性)を失う。これが、ある種の男性特有の攻撃性や気の短さ、怒りっぽさをはじめ、「物事のとらえ方」や「思考パターン」、「決断力」などの、「男らしい考え方」に影響すると考えられている。また、明るい性格や前向きな態度などに表れる「生きる活力」「生気」「気持ちの張り」といった、バイタリティを高める作用があるとも言われている。
 また、これによって奥まった場所に作られていた精巣が陰嚢まで下りてくる。
 ちなみにその後、思春期まで男児のテストステロンレベルは、女性と同じになる。
 なお、陰茎などの男性外生殖器の形成に関係するのは、5αリダクターゼにより代謝されたジヒドロテストステロン(DHT)によるもの。
 ②思春期以降の男性では睾丸からの分泌が顕著に増加し、男性的な身体の特徴が形作られる(二次性徴)。性器の発育、声変わりなどは、すべてテストステロン分泌量の増加に起因するもの。
 テストステロンが異性を惹きつける体臭と言われるフェロモンを発生させて、ドーパミンという興奮作用のある神経伝達物質を増やす。そして、骨盤神経に作用して勃起を起こすなど、男性がセックスを行うために必要な「興奮」「勃起」などのスイッチを次々と立ち上げて行く作用がある。
 ③一般に30歳ごろから減少しはじめ、年1-2%の割合で減少する。テストステロンの減少は男性更年期と 呼ばれるが、女性の更年期ほどには急激にホルモン分泌は変化せず、身体や精神に与える影響も個人差が大きい。ストレスなどで急激な減少を起こすと、男性更年期障害を起こす。テストステロンの減少率は個人差が大きく、70代になっても、30代の平均値に匹敵するテストステロン値を維持している男性も多い。

その他の研究結果報告(要review)
  • 更年期うつ病の治療にテストステロン補充療法として投与する場合がある(ただし、日本では保険適用外)。
  • 筋力トレーニングや不安定な興奮(例えば闘争や浮気など)によってテストステロンの分泌が促される。危険物あるいは危険な行為が更なる分泌を促す。
  • 痛みを鈍らせる効果がある。
  • 心理的には闘争本能や孤独願望(1人でいたい、干渉されたくない欲求)を高める作用をもたらす
  • 前立腺(独Prostata英prostate)疾患に関与しており、前立腺癌や前立腺肥大を抑えるために抗アンドロゲン剤の投与や睾丸摘出(英testectomy)を行うことがある。
  • アメリカの心理学者、ジェイムズ・M・ダブスはテストステロンの量が多いほど暴力的な犯罪を犯していることが分かったと述べている。
  • テストステロン補充療法を受けた中高年男性は、受けてない男性に比べ心臓発作や脳卒中のリスクが高まる。
 テストステロンの代謝
 テストステロンは標的臓器の5αリダクターゼにより、ジヒドロテストステロン(DHT)へと代謝される。アンドロゲン受容体への結合親和性はDHTの方が高いが、テストステロン自体も結合し標的遺伝子の転写を活性化する。
 テストステロン自体には禿げを起こす作用はなく、DHTに代謝されることで初めて薄毛、性欲減退を促す作用が出る。5αリダクターゼの分泌量は遺伝が関係しているため、遺伝的要因による禿げが存在すると言われる。
 5αリダクターゼを阻害し、DHTの生成を抑制するフィナステリドミノキシジルキャピキシルには、男性型脱毛症の進行遅延に効果があるようだ。

テストステロンの作用とはたらき より

http://www.daito-p.co.jp/reference/testosterone_action.htm
 Wikipedia テストステロン より
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%83%B3



HbA1c グリコヘモグロビン
高血糖状態が長期間続くと、血管内の余分なブドウ糖は体内の蛋白と結合します。この際、赤血球の蛋白であるヘモグロビン(Hb)とブドウ糖が結合したものがグリコヘモグロビンです。このグリコヘモグロビンには何種類 かあり、糖尿病と密接な関係を有するものが、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)です。
ヘモグロビンは赤血球の中に大量に存在する蛋白質で、身体の隅々まで酸素を運搬し、代謝の産物である二酸化炭素を肺まで運ぶ役割を担っています。赤血球の寿命はおよそ120日(4ヶ月)といわれています。赤血球はこの間ずっと体内を巡り、血管内のブドウ 糖と少しずつ結びつきます。高血糖すなわち余っている糖が多ければ多いほど結びつきが増え、グリコヘモグロビン(HbA1c)も多くなるわけです。
血液中のHbA1c値は、赤血球の寿命の半分くらいにあたる時期の血糖値の平均を反映します。すなわち外来で血液検査をすると、その日から1~2ヶ月前の血糖の状態を推定できることになります。
正常値は、4.3~5.8%で、6.1%以上であればほぼ糖尿病型と判断して良いことになっています。


糖尿病教室 HbA1c より
http://www.furano.ne.jp/utsumi/dm/hba1c.htm
 

2015年12月4日金曜日

News: 体脂肪の多さは痩せにくさと比例する-タンパク質sLR11

今日のMED News。

先日、科学誌のNature Communicationsにて発表されたイギリス・ケンブリッジ大学と日本・東邦大学の共同研究によると、 体脂肪が多い個体において、ある種のタンパク質が、体脂肪の減りを抑える性質を持っていることが分かりました。

(*脂肪組織についての解説は記事下部参照。)


マウスを使った実験にて、sLR11というタンパク質が褐色脂肪の燃焼による体温維持を抑える機能を持つことが判明。そして、sLR11遺伝子ノックアウトマウスでは、脂肪燃焼の抑制がないために、たくさんカロリーを摂取しても太りにくいという結果が出ました。

また、同じノックアウトマウスでは、通常は褐色脂肪細胞にて働くタンパク質を生成する遺伝子が、白色脂肪細胞においても強い働きを見せました。彼らの体は普通のマウスよりもより熱生成が活発で、脂肪分の多い栄養を摂るとエネルギー使用量が高まったということです。

さらなる研究にて、sLR11の詳しい働きが明らかになりました。このタンパク質は脂肪細胞のある受容体に結合し、熱生成を抑えて脂肪分を蓄えるようにシグナルを発します。これにより、体内の糖分や脂肪分がより多く脂肪組織に貯蔵されていくのです。
また、人体において、このsLR11の血中濃度が、脂肪細胞の量と直接比例するということが分かったのです。つまり、脂肪細胞が多ければ多いほど、脂肪燃焼を抑えるタンパク質の量も多い、すなわち痩せにくい…とういことです。
ある患者においてのデータでは、体重の減りに比例して、この燃焼抑止タンパク質も減ったということでした。研究者は、ここから「sLR11は脂肪細胞から生成される」という仮説を立てています。

この結果から分かるのは、人体が貯蓄したエネルギー源をなるべく長く保存するためのメカニズムを持っているということです。これは、大昔の人間の生活において大切な機能だったでしょう。毎日必死に狩りをしてせっかく苦労して得た食べ物が、生命維持には使われず、すぐに熱として無駄に放出されては困ります。

それが、現代のように食の飽和の時代になると、食物の摂取が過剰になりがちです。そうして得た過剰な養分もとりあえず貯めておいて、本当に必要な時だけに使うように大事にしまっておくので、どんどん脂肪分が増えていきます。原始時代では現代と違ってタンパク質の摂取量の方が多く、脂肪分はエネルギー価の高い貴重な栄養源だったので、飢餓状態に陥った際にエネルギー源として使うためのリストでは、一番最後に載っているんです。順番としては、

1. 糖分 (血糖、グリコーゲン。数分~数時間分のエネルギー)
2. タンパク質 (筋肉。一週間)
3. 脂肪 (4~6週間) です。

脂肪組織の分解は、体内からのエネルギー獲得の最終手段なのです。
このことからも、肥満型の人がダイエットをしようとしてもなかなか難しい理由が説明できるでしょう。

研究者たちは、この結果をもとにして、新しい薬の開発に貢献できるのではないかと考えています。sLR11タンパク質を阻害するか、またはそれ同様の効果を示す薬を開発できれば、肥満解消につながるのではないでしょうか。


元記事
Je mehr Fett, desto weniger Chancen abzunehmen
APA Dez 1, 2015
http://www.univadis.de/medical-news/53/Je-mehr-Fett-desto-weniger-Chancen-abzunehmen?utm_source=newsletter+email&utm_medium=email&utm_campaign=medical+updates+-+daily&utm_content=502410&utm_term=automated_daily


脂肪組織について
哺乳類の体脂肪には、白色脂肪褐色脂肪の二種類があります。

白色脂肪は過剰に摂取されたカロリーの貯蔵庫であり、身体のエネルギーが足りないときに分解され利用されます。

褐色脂肪は人体において重要な体温維持・調節に関わっています。

みなさんが寒い場所に出たとき、身体はどういう反応をしますか? 体が震えますよね。これは筋肉を収縮 させて、熱を作り出しているのです。しかし、この現象はいつも起きるわけではありません。では、気温の変化がほんのわずかで筋肉の助けまではいらないという場合、身体はどこでどうやって熱を作り出しているのでしょうか?

答えはこの褐色脂肪組織です。褐色脂肪にはノルアドレナリンに対する受容体があります。このβ3受容体に結合すると、UCP1(脱共役タンパク質、独・英uncoupling protein。サーモゲニンThermogeninとしても知られる)が生成され、ミトコンドリアで脱共役が起こり熱が産生されます。
脱共役とは、ミトコンドリア内でのATP生成のために必要なプロトン勾配を、このUCP1の埋め込みによって緩やかにし、ATP生成に使われるはずだったエネルギーを熱として放出させる現象のことです。これは、動物の冬眠時に良く見られる、運動に伴わない大事な熱産生の手段です。また、筋肉がまだ発達していない乳児においても大切なメカニズムです。そのため、乳児における褐色脂肪の割合は全体の5%と、成人に比べ高くなっています。
体が成長するにつれて減っていく褐色細胞ですが、大人になっても完全になくなるわけではなく、熱生成が必要なときには利用されています。

この二つの脂肪組織の違いを上げると、単一の脂肪滴が含まれている白色脂肪細胞とは対照的に、褐色脂肪細胞は、多数の小さな液滴とはるかに多い数のミトコンドリアが含まれています。 このミトコンドリアが持つシトクロームというタンパク質は、鉄を含むヘムを補因子として含んでいます。この鉄分が褐色の正体です。また、褐色脂肪組織はほとんどの組織よりも多くの酸素を必要とするため、褐色脂肪組織はまた、白色脂肪組織よりも多くの毛細血管が集まっています。

このように、体脂肪には二種類あり、それぞれ重要な役割を担っています。一般的に「太っている」というのは白色脂肪が過剰に貯蓄されている状態のこ とで、その場合は様々な病気のリスクが高まるため、栄養バランスや運動など、生活習慣を見直す必要が出てきます。ですが、どちらのタイプもいっしょくたに して「脂肪は健康に悪い!」とは言えないことを知っておいてください。

 
メモ
・UCP1は褐色脂肪細胞にのみ存在する。
・UCP2は白色脂肪細胞、免疫系細胞、神経細胞などに認めらる。
・UCP3は主に骨格筋、心臓などの筋組織において多く存在する。糖尿病患者の骨格筋においてUCP3タンパクの合成が著明に低下していることから、熱産生あるいは脂肪代謝に関連していると考えられている

・褐色脂肪細胞には骨格筋と同じくmyogenic factor 5 (Myf5)というマーカーが表面に存在し、この二つの組織は同じ幹細胞から分化したと考えられる。同じく中間葉から発達し、褐色と白色に分化した脂肪細胞でも、白色脂肪細胞にはこの特徴がない。

・日本人を含めた黄色人種ではβ3受容体の遺伝子に変異が起こっていることが多く、熱を産生することが少ない反面、カロリーを節約し消費しにくいことから、この変異した遺伝子を節約遺伝子と呼ぶ。
 
2,4-ジニトロフェノールCCCPのような物質も、同じような脱共役の機能を有する有害物質と見なされている。エタノールやサリチル酸もまた脱共役剤の機能を有し、過剰に摂取した場合、体内のATPを消耗し、体の温度を上昇させる。 
→アルコール摂取で体温上昇。
→アスピリンでも? 解熱要素で打ち消される?

2015年12月2日水曜日

「健康」とは何か?

それではこのブログ記事第一弾。
「健康」とは一体何なのか、を考えていきます。

あなたは今、健康ですか?

健康であること。それが一番ですよね。お金があっても、仕事があっても、健康じゃなければ楽しいことも楽しめません。
…この世じゃ健康維持のためにお金がかかるというのは、また別のお話。

では、健康とは何なのでしょうか。

何処も痛くないこと? 五体満足であること? 精神を病んでいないこと?

なんだか道徳の授業みたいな質問ですね。そういえば昔、小学校の授業でそんなことを話し合った記憶があります。

重い持病を持っていても、脚が一本なくても、心が健康なら病気じゃないのか。
五体満足であっても、精神的に追い詰められていたら健康じゃないのか。
普段は元気いっぱいだけれど、今日はたまたま悩み事を抱えてしまって憂鬱になっているときは、どういう状態なのか。これは病気なんだろうか。

こう考えていくと、健康であること、そして病気であることの定義が欲しくなりますね。
世界保健機関・WHOは、憲章の中で「健康」を以下のように定義しています。

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.” (WHO Definition of Health)

自分用メモ: ドイツ語訳では"Gesundheit ist der Zustand völligen körperlichen, geistigen, seelischen und sozialen Wohlbefindens."

1948年から変更されていない定義だそうです。

日本語に訳すと、「健康とは、身体的、精神的、そして社会的に完全に良い状態であり、単なる病気や病弱の存在しないことではない」 ということですね。WHO日本のサイトを見ると、もっと大仰な書き方をされています。

ただ、この定義をそのまま適用すると、この世の中の誰も健康ではないような気がしてしまいますね。いつもは元気な人でも、ちょっと風邪を引いたり、うっかり切り傷を作ってしまったり、なんてことは日常茶飯事です。何より、私たちの体の免疫システムが休みなく外からの病原体の攻撃と戦っている限り、誰もが常に「少しだけ病気」な状態にあるわけです。四六時中自己と非自己が入り混じっている状態は、WHOがいう「完全な状態」ではない訳ですからね。
(自己と非自己―免疫学のお話は、また別の記事でしようと思います。)

ここで浮かび上がる疑問が一つ。健康と病気は、果たして二極性のものなのでしょうか。 つまり、人は健康か病気か、どちらかの状態にしかなりえないのでしょうか?
先ほど「少しだけ病気」と書きましたが、みなさんだって挨拶がてらに「元気?」と聞かれて「うん、元気」と答えても、実際は「実は昨晩からちょっと頭が痛い」だったり、「今朝指を切っちゃったけど血は止まったよ」な状態だったりと、「日常的な活動はできる範囲内で体が健康じゃない」場合ってありますよね? これくらいの状態なら、自分を病気ととらえない方も多いでしょう。
また、風邪をひいて高熱を出して寝込んでいるときも、山を越えて「今日は昨日より熱も下がったし、だるさも減ったな」という場合は、病気でありながらも「少しだけ健康に近づいた」と思えるでしょう。

お分かりのように、健康と病気の状態は、単なる二分法(独Dichotom、英dichotomy)で分けられるものではありません。性別を男と女の二つに分けるようにはいかないのです。(…っと、これもここ数年ホットな議論が交わされているテーマですが、これもまた別のお話。)
そうではなく、「健康」と「病気」は、多岐にわたる状態の両極端でしかないのです。(独Poltyom、英polytomy)
そして、今日のあなたの状態は、この二つの間のどこかにあり、「どちら寄りか」で説明するしかないわけですが。うーん、一筋縄じゃ行きませんね。

しかし、両極端ということであれば、どちらかを定義すればもう一方の定義は簡単ですね。
というわけで、より普遍的に通用する「健康」の概念を自分なりに定義しちゃおうと思います。

健康」とは、「身体的にも精神的にも、そして社会的にも、(当面の間)自分が満足できる状態」。

詳しく言うと、自分の身体的、精神的、社会的活動に障壁がない状態ですかね。
(独Gesundheit = das Fehlen von körperlicher und seelischer Störungen.)

健康というと、どうも自分の体と精神のことだけを考えがちですが、この社会で生きていくには社会的な面の健全さと満足度も重要なんですね。個人からの観点でももちろんそうなんですが、もっと言っちゃうと、この社会の一部となって働き、社会に貢献できるかどうかが重要なようで。これは生命・社会保険の観点ですね。


そして、「病気」の状態とは、 「身体的、精神的、社会的な普通値からの乖離」です。または、もっとも単純に言えば、「健康でない状態」。これで定義完了です。あらシンプル。



ふう。普段から使っている言葉なのに、「健康ってどういうこと?」って聞かれるとなかなかぱっと説明しにくいですね。
要するに、身体的にも精神的にも社会的にも、当面の間自分が満足できる状態であれば、健康と言っていいのではないでしょうか。どの面においても完璧な人間などというものは、この世に存在しないのですから。上々の気分で、世界を自分の限度なりに存分に活動し楽しむことができるのなら、それが健康であるということじゃないでしょうか。


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長くなってしまいましたが、この辺で健康議論を終わります。正直自分でも何かいてるのかぐちゃぐちゃになってる気がするので、また加筆修正するかもしれません。
ご意見ありましたら何なりとどうぞ。


参考資料
WHO Definition of Health
日本保健機構 健康
Medizinische Pszchologie/Medizinische Soziologie - Erich Kasten, Bernhard A. Sabel 17. Auflage