2015年12月5日土曜日

News: テストステロン投与が糖尿病治療の効果を高める

今日のMED News。

アメリカの研究プロジェクトグループ"Diabetes Care"によると、低テストステロン値を持つ男性のⅡ型糖尿病患者に対するテストステロンの投与は、ホルモン治療の側面だけでなく、インシュリンへの感度を高め糖尿病の治療をより効率的にする効果を持つことが分かりました。
(テストステロンについては記事下部参照)

ニューヨーク・バッファロー大学が行ったランダム化試験では、94人のⅡ型糖尿病男性患者が集められました。うち44名において、テストステロン値、そしてインシュリン遺伝子の転写頻度の低さが認められました。これによるインシュリン感度の低さは、血糖値の下がりにくさを顕著にしていました。
実験において、彼らは24週間にわたり、テストステロン注射、もしくはプラシーボの注射で治療されました。その結果、テストステロンを投与された患者においてインシュリン感度の著しい上昇を確認。筋肉などの組織のグルコース(ブドウ糖)吸収度が32%上がりました。また、インシュリン遺伝子の転写もテストステロンにより活性化されたというデータが出ました。

また、この治療法は、体重の変化が起きない場合において、体脂肪率の低下と筋肉質の増加に貢献しました。それぞれ3kgずつ変化したそうです。
ヘモグロビンにグルコースが結合したものであるHbA1c(記事下部参照)の濃度に変化はありませんでしたが、空腹時の血中グルコース濃度が12mg/dlも低下したという結果も出ました。HbA1cに対する影響を知るためには、更に長期の治療が必要であるとのことです。

「これは、テストステロンがインシュリン感度を上昇させることができる、つまり一種の代謝ホルモンであるという初めての確固たる証拠だ」と、論文の第一著者である Paresh Dandona は強調しました。


元記事
Testosteronersatztherapie hilft Diabetikern gleich doppelt 
APA Dez 3, 2015
http://www.univadis.de/medical-news/53/Testosteronersatztherapie-hilft-Diabetikern-gleich-doppelt?utm_source=newsletter+email&utm_medium=email&utm_campaign=medical+updates+-+daily&utm_content=506288&utm_term=automated_daily


テストステロン
 ・アンドロゲンに属するステロイドホルモンで、男性ホルモンの一種。
・ほかのステロイドホルモンと同様、19の炭素からなるアンドロスタンAndrostanが基盤となる。
・前駆体はジェスタジェンGestagen (21C) または DHEA (Dehydroepiandrosteronデヒドロエピアンドロステロン)。
・名前の由来: Testis + Steroid (睾丸+ステロイド。下記参照)

テストステロンの生成
哺乳類のオス
  95% 睾丸 (=精巣。いわゆるゴールデンボール。独Hoden英testicleラテンtestis)
    5% 副腎 (独Nebennniere英adreanal glandラテンGlandula suprarenalis)

睾丸では下垂体ホルモンの一つである黄体生成ホルモンLH (luteinisierende Hormon) の刺激により、ライディッヒ細胞(Leydig-Zwischenzellen)から生成される。  

一日の分泌量は? 血中濃度は一日の中でも変動する。基準値の範囲は2.00-7.60ng/mlくらい。

哺乳類のメス
  卵巣や副腎から男性の5-10%程度量ながら分泌される。

テストステロンの作用 
  ・筋肉増大 (→ドーピング剤)
  ・骨格の発達 (※テストステロンと成長ホルモンのバランスが崩れると背が伸びなくなる。少なくても多すぎてもダメ)
  ・女性の男性ホルモン分泌の分泌量は前述通り男性の5-10%程度で、陰毛の発毛に関与する。


性ホルモンとしての作用
 ①胎生期、妊娠6週目から24週目にかけて大量のテストステロンが分泌される時期があり、これにさらされること(アンドロゲン・シャワーと呼ばれる)によって、脳は女性的特徴(ホルモン分泌の周期性)を失う。これが、ある種の男性特有の攻撃性や気の短さ、怒りっぽさをはじめ、「物事のとらえ方」や「思考パターン」、「決断力」などの、「男らしい考え方」に影響すると考えられている。また、明るい性格や前向きな態度などに表れる「生きる活力」「生気」「気持ちの張り」といった、バイタリティを高める作用があるとも言われている。
 また、これによって奥まった場所に作られていた精巣が陰嚢まで下りてくる。
 ちなみにその後、思春期まで男児のテストステロンレベルは、女性と同じになる。
 なお、陰茎などの男性外生殖器の形成に関係するのは、5αリダクターゼにより代謝されたジヒドロテストステロン(DHT)によるもの。
 ②思春期以降の男性では睾丸からの分泌が顕著に増加し、男性的な身体の特徴が形作られる(二次性徴)。性器の発育、声変わりなどは、すべてテストステロン分泌量の増加に起因するもの。
 テストステロンが異性を惹きつける体臭と言われるフェロモンを発生させて、ドーパミンという興奮作用のある神経伝達物質を増やす。そして、骨盤神経に作用して勃起を起こすなど、男性がセックスを行うために必要な「興奮」「勃起」などのスイッチを次々と立ち上げて行く作用がある。
 ③一般に30歳ごろから減少しはじめ、年1-2%の割合で減少する。テストステロンの減少は男性更年期と 呼ばれるが、女性の更年期ほどには急激にホルモン分泌は変化せず、身体や精神に与える影響も個人差が大きい。ストレスなどで急激な減少を起こすと、男性更年期障害を起こす。テストステロンの減少率は個人差が大きく、70代になっても、30代の平均値に匹敵するテストステロン値を維持している男性も多い。

その他の研究結果報告(要review)
  • 更年期うつ病の治療にテストステロン補充療法として投与する場合がある(ただし、日本では保険適用外)。
  • 筋力トレーニングや不安定な興奮(例えば闘争や浮気など)によってテストステロンの分泌が促される。危険物あるいは危険な行為が更なる分泌を促す。
  • 痛みを鈍らせる効果がある。
  • 心理的には闘争本能や孤独願望(1人でいたい、干渉されたくない欲求)を高める作用をもたらす
  • 前立腺(独Prostata英prostate)疾患に関与しており、前立腺癌や前立腺肥大を抑えるために抗アンドロゲン剤の投与や睾丸摘出(英testectomy)を行うことがある。
  • アメリカの心理学者、ジェイムズ・M・ダブスはテストステロンの量が多いほど暴力的な犯罪を犯していることが分かったと述べている。
  • テストステロン補充療法を受けた中高年男性は、受けてない男性に比べ心臓発作や脳卒中のリスクが高まる。
 テストステロンの代謝
 テストステロンは標的臓器の5αリダクターゼにより、ジヒドロテストステロン(DHT)へと代謝される。アンドロゲン受容体への結合親和性はDHTの方が高いが、テストステロン自体も結合し標的遺伝子の転写を活性化する。
 テストステロン自体には禿げを起こす作用はなく、DHTに代謝されることで初めて薄毛、性欲減退を促す作用が出る。5αリダクターゼの分泌量は遺伝が関係しているため、遺伝的要因による禿げが存在すると言われる。
 5αリダクターゼを阻害し、DHTの生成を抑制するフィナステリドミノキシジルキャピキシルには、男性型脱毛症の進行遅延に効果があるようだ。

テストステロンの作用とはたらき より

http://www.daito-p.co.jp/reference/testosterone_action.htm
 Wikipedia テストステロン より
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%83%B3



HbA1c グリコヘモグロビン
高血糖状態が長期間続くと、血管内の余分なブドウ糖は体内の蛋白と結合します。この際、赤血球の蛋白であるヘモグロビン(Hb)とブドウ糖が結合したものがグリコヘモグロビンです。このグリコヘモグロビンには何種類 かあり、糖尿病と密接な関係を有するものが、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)です。
ヘモグロビンは赤血球の中に大量に存在する蛋白質で、身体の隅々まで酸素を運搬し、代謝の産物である二酸化炭素を肺まで運ぶ役割を担っています。赤血球の寿命はおよそ120日(4ヶ月)といわれています。赤血球はこの間ずっと体内を巡り、血管内のブドウ 糖と少しずつ結びつきます。高血糖すなわち余っている糖が多ければ多いほど結びつきが増え、グリコヘモグロビン(HbA1c)も多くなるわけです。
血液中のHbA1c値は、赤血球の寿命の半分くらいにあたる時期の血糖値の平均を反映します。すなわち外来で血液検査をすると、その日から1~2ヶ月前の血糖の状態を推定できることになります。
正常値は、4.3~5.8%で、6.1%以上であればほぼ糖尿病型と判断して良いことになっています。


糖尿病教室 HbA1c より
http://www.furano.ne.jp/utsumi/dm/hba1c.htm
 

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